ヒロイン図鑑

“ヒロインになる方法”を内面・外見から研究しています。

【クズの本懐】漫画版・茜先生はなぜモテる?モテても満たされない人の深層心理

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女子アナのような清楚な見た目に誘われ近づけば
気がつくとズブズブに手のひらで転がしてくる鋼鉄のマドンナ。
マンガ『クズの本懐』でヒロインを翻弄する
 「茜先生」を取り上げます。

人の好意をコレクションのように
奪って、集めて、並べてうっとり眺めては
いつまでも飢えない乾きを癒し続ける茜先生ですが、
彼女の生存戦略の根底には「自己の不確立」がありました。

※注意※
この記事は既刊9巻までのネタバレを含んでいます!

この記事で分かること
  1. 異性に女として意識させるテクニック
  2. 女性としてモテても満たされない理由
  3. 「傷つかない好意」では得られないもの

 作品概要 

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出典:『クズの本懐』コミックス5巻
作品名 クズの本懐(クズのほんかい)
作者 横槍メンゴ
出版社 スクウェア・エニックス
掲載誌 月刊ビッグガンガン
発表号 2012年9月
巻数 全9巻

出典:wikipedia

あらすじ:

安楽岡花火と粟屋麦は一見、理想の高校生カップル。しかし2人とも他に好きな人がいることを了解しながら一緒にいた。花火は幼いころからお兄ちゃんと慕っていた鐘井鳴海を、麦は昔家庭教師をしてくれた皆川茜が好きだった。

出典:wikipediaより抜粋

作品実績

クズの本懐』は、2017年の同時期にアニメ化・TVドラマ化され、累計発行部数180万部(2017年3月時点)の話題作です。

作者の横槍メンゴ先生は女の子の描写が特に丁寧で、
クズの本懐』でも主人公・花火や今回取り上げる茜先生、その他ヒロインもとても可愛いです。可愛い。
柔らかくて、睫毛や髪の毛の繊細さまで細かく表現した
「夢のような女の子像」×「人間が隠したいような本能や煩悩」
ストレートに描くギャップに痺れます。
こんな可愛い子がこんなに淫らなの?っていう覗き見感。

現在はヤングジャンプで『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の赤坂アカ先生とタッグを組んで『推しの子(既刊4巻)』を週刊連載中。
本作は2021年4月時点で単行本の累計発行部数はすでに100万部を突破している、今注目の作品です。

ヒロインプロフィール

皆川 茜(みながわあかね)。本作のヒロイン・花火(はなび)らの高校に勤務する音楽教師。麦の中学時代の家庭教師。清楚な容姿から、生徒の人気が高い。しかし、その清楚な容姿とは反し、性的なモラルが少々乱れている。
Wikipediaより

 初登場の頃は、
「こういう女性はモテますよね」って感じで
清楚・にこやか・異性に対する程よく砕けた距離感の3拍子を兼ね備えた
ザ・モテる女でした。(実際モテる)

それが後に、とんだクラッシャーだったことが発覚し
茜先生の登場がこの作品の面白さを底上げしたと言っても過言ではありません。
※あくまで主観です 

相関図

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画像出典:ビックガンガンHP

主な登場人物です。
茜先生を取り巻く人間関係に絞っています。

本作の主人公は、花火(はなび)。
17歳の高校2年生で、同級生の麦(むぎ)と付き合っています。

美男美女カップルで周りからも憧れの的ですが、
実は花火にも麦にも、別の想い人がいます。

花火は、幼馴染で学校の先生でもある「鐘井先生
麦は、中学時代の家庭教師で同じ高校の音楽教師の「茜先生」

本命に想いを告げられないもどかしさと寂しさを埋めるために
同じ境遇にあるお互いで慰め合うことにした、花火と麦。

でも、異性からの視線を一身に浴びる茜先生は、
実はとんでもない人で・・?

茜先生がモテる理由

茜先生はモテるというよりも
狙った獲物は必ず落とすというゲーム感覚
異性とコミュニケーションを取っています。

前回解説したサエコさんとは対照的で
女性にはゴリゴリに嫌われています。笑

関連記事

hal-heroine.hatenablog.com

 

でも、茜先生は女性からの嫌悪感や嫉妬すらも
「気持ちいい」と言っているので一種の性癖ですね。

この記事では、茜先生の振る舞いが
恋愛の初期における「異性に女として意識させるフック」
として秀逸なので説明していきますね!

〜見た目編〜

対人関係で相手に好意的に思ってもらうには
第一印象は欠かせません。

その点で茜先生は
「女性らしさ」に全振りした
清潔感のある見た目をしています。

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出典:『クズの本懐』コミックス7巻

サラサラロングヘア、整った顔立ち、男性を威嚇しない大人しめなファッション、シャンプーの香り、控えめなナチュラルメイク‥女子アナみたい

作中で花火も関心するほどの徹底ぶり。

このように無難で威嚇しない格好をするのは
茜先生なりのポリシーがあってです。

茜先生は、人から求められるには
「個性なんていらない」と言い放っています。

「主張するものって嫌い」
「個性なんて他人は求めていないもの」
「求められなきゃ意味がない」
出典:『クズの本懐』コミックス3巻

これは茜先生が他人の欲求を叶えることで
相手の心を手に入れてきた経緯があるから。

普通の人だったら自分を消してまで相手に求められることに
だんだん苦しさを覚えていきます。

しかし、茜先生は極端に当事者意識が薄いので(※後述します)
相手から求められることによって初めて自分を認識できるという
ちょっと変わった思考の持ち主です。

〜考え方編〜

そんな茜先生がなぜ異性の視線を集めるのか、
振る舞いから内面を解説していきます!

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【茜先生が男性にモテる理由】

  • 浮世離れした考え
  • 人の感情に敏感
  • 主観が薄い

理由を解説していきます!

▽▽▽

1. 浮世離れした考え

POINT

・冷静に相手を観察できる
・ゲーム感覚でスキルを積んでる

茜先生が一番ぶっとんでいるのは
「他の人に向けられた好意を自分に向けたい」という
気持ちが人一倍強いところです。

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出典:『クズの本懐』コミックス

コレだけ聞くととんでもない思考ですが、
「自分の“好き”の気持ちに振り回されていない」から
冷静に相手を観察できるんです。

その執着のなさは浮世離れした雰囲気を出し、
気のあるそぶりを見せても本心は何を考えているか分からない
という男性の狩猟本能をくすぐる結果になります。

 また、ゲーム感覚というのもポイントで
ゲームってことは一線を引きつつも、レベルアップを求めているんですよ。

つまり、より高度な駆け引きを楽しみたいなどの
言ってしまえばテクニック向上に繋がるわけで
「異性の気持ちをこちらに向かせる」テクニックはどんどん身についていくのです。
(モチベーションは不純だけども)

2. 人の感情に敏感

POINT

・人の好意に気づける
・自分がどう振る舞えば相手に好意的に映るか熟知している

 じゃあ、なぜ茜先生がそうやって人を振り向かせられるかというと
人の感情(もっと言えば恋愛感情)に敏感だからです。

花火・麦・鐘井先生の恋心をすぐさま見抜き
「どうすれば自分がもっとも優越感を感じられるか」を計算して
立ち振る舞っていたくらいです。

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出典:『クズの本懐』コミックス

異性に意識させるテクニック

異性を振り向かせる具体的なテクニックとして描かれていたのが
この2点です。

ワンポイント心理学

 「好意の返報性」
自分に好意を抱く人や、心を許してくれる人に好意を抱く心理。
人は何かをしてもらうと、お返しをしなければという心理が働きます。 

「単純接触効果」
接触回数が多いほど、その対象に好意を持つ心理。
繰り返し接することで、その刺激への親近性が高まります。

 麦には、家庭教師時代に「誘ってるのか?」ってくらいの隙を見せることで
「もしかして俺にもチャンスがあるのかも」と意識を向けさせていました。

鐘井先生にも、
食事に誘われたら付いていく、お昼を一緒に食べるなど
「単純接触効果」を狙ってマメに話しかけたり、
隣の教室にいるタイミングでピアノを弾いたり
自分の存在を意識させていました。

3. 主観が薄い

POINT

・感情に飲み込まれない
・相手の理想を叶えてあげられる

 茜先生が他の人と違う最大のポイントは
「主観が薄い」ことです。
具体的には、当事者意識が極端に低い。

茜先生は自分から人を好きになったことがありません。

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出典:『クズの本懐』コミックス3巻

茜先生は、自分でも制御できないような感情に飲み込まれたり
相手の一挙一動に振り回されることもない分、
冷静に相手を見つめることができます。

また、主観が薄いということは
「相手の望む自分」を演じられるのです。

茜先生がモテる理由まとめ!

モテる理由
  1. 冷静に相手を観察できる
  2. ゲーム感覚でスキルを積んでる
  3. 人の好意に気づける
  4. 自分がどう振る舞えば相手に好意的に映るか熟知している
  5. 感情に飲み込まれない
  6. 相手の理想を叶えてあげられる

でも、コレって誰にでもできることではありません。

というのも、自分を置いてけぼりにして
ゲームのように恋愛をすることでは
満たされないからです。

女性としてモテても満たされない理由

 見た目編でも書きましたが、
茜先生は「女として求められること」を
自分の価値として置いてきました。
その点で、他の女性から異性を奪ったり圧倒的にちやほやされることで
自分の価値を高めていました。

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出典:『クズの本懐』コミックス7巻

心理学的な話になりますが、
「特別扱いされたい」という気持ちの裏には
「自己重要感」を満たしたいという欲求があります。

ワンポイント心理学

「自己重要感」
自分が価値のある人間である、必要とされていると感じる心理。
自分自身が認めるだけではなく、相手からの評価も重要になる。

-参考:

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 茜先生は一見、自己重要感めちゃ高そうです。
作中でも「自分のことが好きすぎるのかもしれない」と言ってたくらい。

でも、自己肯定感と自己重要感はイコールではなくて
自分が「女として魅力がある」ことは知っていても
「女」という役割を取り払った時に、
自分には何があるのかについては答えを出せずにいました。

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出典:『クズの本懐』コミックス8巻

そこから茜先生の意識が変化するきっかけになったのが、
鐘井先生です。

茜先生が「女」から「ヒト」として自我が芽生えた瞬間

茜先生は最後に鐘井先生と結ばれます。
これまで、相手の求める「理想の女性像」
もっと言えば「男女ゲームにおける役割」を演じることで
相手に快楽を与えていた茜先生。

でも、幼い頃に母親を亡くした鐘井先生には
良い意味で「リアルな女性像」が無かった。

女性に対する期待も・実像も知らなかった分、
目の前の茜先生を見て彼女を受け入れようとした。

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出典:『クズの本懐』コミックス8巻

それが茜先生には新鮮で、今まで向けられたものとは違う眼差しに
初めて「役割を降りる」ことを選べました。

これまで異性から向けられていた「女としての自分」ではなく、
「もっと奥にあるそのままの自分」の輪郭を知ることが出来るかもしれない。

そんな期待を持って、鐘井先生の申し出を受けた。

以前の記事にも書きましたが、人は他人を愛することを通じて自分を知ります。
他人に感情を向けることがなかった茜先生が、初めて他人に興味を持ったのです。

茜先生が「女」としてではなく「ヒト」として
初めて誰かと向き合ってみようとした瞬間でした。

「傷つかない好意」では得られないもの

クズの本懐は、作品の中で巧みに価値観を誘導させていきます。

最初は、どんな男性も手玉に取ってしまう茜先生の
圧倒的ラスボス感
他の登場人物も、読者でさえも為す術なしでした。

しかし、茜先生の圧倒的モテ力に悔しさを感じたヒロイン花火が
茜先生をマネて異性を誘惑していくところから
見方が変わっていきます。

茜先生のやり方は、振り向かせて体の関係を持つことがゴールであって
長期的な関係の築き方が分からなかった。

でも、自分の本心を隠してまで相手に好意を振りまき
たくさんの「好き」を集めたところで
心を見せられていないのならひとりぼっちと変わらない。

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出典:『クズの本懐』コミックス7巻

花火は、茜先生の視点に立って初めて分かった孤独と
これまで嫌悪すら抱いていた
「制御できない恋心」でも、向き合おうと決意します。

 人を好きになることは時にもどかしく
上手くいかないことだってたくさんあって傷つくけれど
それでも、生まれた感情を大切にして生きていきたい。

それが、もがき続けた花火の結論でした。

茜先生名言集

異性に「異性」としてみられるのは息をするより簡単なのであまりに容易いので

他人から向けられる好意ほど…気持ちいモノなんて…ないのに

異性にチヤホヤされるとひたすら気分がいいですし同時に同性から向けられる嫉妬心を扇情するのは正直もっと好きです 正直やめられないと思います

まとめ

茜先生は異性の好意に敏感で
女性として求められる要素を
差し出すことにためらいが無い分
異性を惹きつけることが得意でした。

本当は誰かと心から繋がりたかった。

でも、誰かに先に終わりを告げられたら
自分の価値が揺らぐ気がして怖くて
先に夢中にさせたり、複数人と関係を持つなど
リスク回避してきた。

相手を知ればもっと知りたくなり、
その欲望が止まらなくなるのが怖くて
自分から手を放してきた。

でも、鐘井先生から与えられた
まっすぐな愛情に
もし傷つくことになっても特別な傷なら乗り越えていきたい
と思うようになりました。

この作品の根底のテーマの一つに
「誰かと生きること」があるように感じます。

花火も、1人でいれば傷つけられることもないと知りながら
好きな人にぶつかっていく。

1人でいれば失う悲しみも拒絶される怖さもないのに、
傷ついても良いから目の前の相手と血の通った関係を持ちたいと願う。

自分の妄想の中で美化した相手じゃなく、
自分の妄想の中で都合のいい言葉をかけてくれる相手じゃなく、
「現実の相手」と関わりたい。

それは、いくつもの好意を集めるよりも
ずっと自分を成長させ
人としての深みをつくってくれる
大切な関係になっていくからです。

おわり。

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